『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE.~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~ 』の要約まとめを知りたい。
こんな疑問にお答えします。
本書は現代の孤独という背景から、持続可能な経済圏としてのコミュニティの概要や具体的なコミュニティづくりの方法まで紹介しています。
著者は『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』など数々のヒット作を生み出してきた編集者で、株式会社コルクの代表取締役社長の佐渡島庸平さんです。
NewsPicks Bookから出版されている本書の編集者は箕輪厚介さんです。
僕自身、今まで疑問に思っていた「コミュニティが長続きする方法」について、具体的な答えを知ることができました。
今月、最後の本はコルクの佐渡島さんの『We are lonely, but not alone』でした。今までコミュニティに対して抱えていた「どうしてコミュニティは長く続かないのか」という疑問へのひとつの見解が得られたと思う。「安全・安心」の基盤の上に「熱狂」をのせるのがキーポイントだったんだ。 pic.twitter.com/bR65wkgCw4
— Tsuzuki@台湾 (@1276tsuzuki) 2019年1月31日
オンラインサロンやリモートワーク企業など、新しい形のコミュニティを運営している人はもちろん、みんなといるのに孤独を感じるといった人まで、役に立つ1冊だと思います。
今回は、佐渡島庸平さんの著書『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』の要約まとめをご紹介します。
『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE』の要約まとめ【5分で理解できます】
本書の要点は以下の3点に絞られます。
- 「コミュニティ」と「孤独」の関係性
- どんな、コミュニティが継続するのか?
- コミュニティづくりのキーワード「安心」と「安全」
一つずつ要約まとめしていきます。
「コミュニティ」と「孤独」の関係性
インターネットが普及して以降、社会はどんどんなめらかになってきていると著者は説明しています。
常にインターネットに接続していると、モノの購入や人との連絡など、あらゆることがなめらかになっていくからです。
例えば、本書ではAmazon Goの例を出して説明しています。
Amazon Goは欲しいと思ったものを、自由にその場でカバンに入れ、そのまま出ていっていい。全てカメラが捕捉して、自動で請求してくれる。その買い物体験は、とても「なめらか」だ。
出典元:佐渡島庸平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』 p.28
つまり、インターネットを介することで、「商品をそのまま外に持ち出して帰れたら、レジ通さなくていいから便利なのになあ。」という不便さをなめらかにするのです。
インターネットのなめらかはコミュニティの関係性にも影響があります。
ネット以前の社会では、人間関係に「ヒエラルキー」が存在していました。
「先輩と後輩」、「上司と部下」のような上下関係がわかりやすいですね。
実は、インターネットのなめらかさは上下関係の「ヒエラルキー」を崩壊させました。
ほぼ日主宰の糸井重里さんの『インターネット的』という名著では、「リンク・フラット・シェア」という概念がインターネットでは重要になると言われています。
✔️糸井重里さんの著書『インターネット的』
上のようなインターネットを背景として、「マジョリティの孤独」という現象が起こっていると佐渡島さんは言います。
自分たちが何を欲しているか、どう生きたいのかを把握せず、社会規範を不自由だと思わず、従ってきていたマジョリティは、今やコミュニティを失い、情報処理をうまくできず、孤独を感じ始めている。
出典元:佐渡島庸平『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』 p.56
つまり、今までは社会に「ヒエラルキー」が存在していて、自分で考えなくとも「ヒエラルキー」に従っていれば普通に生きられたけど、インターネットの登場で「ヒエラルキー」が崩壊しつつあり、僕たちは自分の頭で考えて行動するということに迫られているということです。
現代に求められているコミュニティは、以前のような「ヒエラルキー」に基づく関係性ではなく、もっとフラットな関係性というわけです。
みんなといても、心の中には「孤独」が巣食う状態が現代の病となって現れてくるのですね。
人生ハードモード時代の幕開けです。
Amazonが運営するレジのないショップのこと。
店内の商品を自由に外に持っていっても自動的に清算される。
どんな、コミュニティが継続するのか?
では、どんなコミュニティが必要とされるようになってきたのでしょう。
佐渡島さんは本書で、以下の3つを例に出しながら説明しています。
- 「楽天」の購入意欲を生み出すコミュニティ
- 「ほぼ日」の参加型コミュニティ
- 『宇宙兄弟』のファンコミュニティ
詳しい説明は、本書を実際に読んでいただくことをおすすめします。
なぜなら、上記の例はビジネスとしてのコミュニティ例だからです。
今回の記事で取り上げたいコミュニティは「マジョリティの孤独」を癒し得るコミュニティです。
・「楽天」のモノをコミュニケーションの中で販売する方法
・「ほぼ日」のファンの参加を促す仕組み
・『宇宙兄弟』の物語を現実化して販売する方法
このあたりを、論理的に理解したい方は本書の第2章を読んでみてください。
話を戻します。
では、どんなコミュニティが求められているのか?
SHOWROOM代表の前田祐二さんは著書『人生の勝算』のなかで、以下の5つの要素が重要であると言っています。
要素①:余白の存在
要素②:常連客の存在
要素③:仮想敵を作ること
要素④:秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること
要素⑤:共通の目的やベクトルを持つこと
キリスト教のような宗教や、明治維新のような新しい国づくりがうまくいったときは、上記の5つの要素はしっかりあります。
一方で、佐渡島さんは本書で、コミュニティを構築するために重要なキーワードとして、「熱狂」と「安心・安全」をあげています。
- 「熱狂」:テンションが高い状態とモチベーションが高い状態の2種類ある。
- 「安全」:客観的に身の回りに危険がなく、危険に対する準備ができている状態。
- 「安心」:イメージがわくこと。予想の範囲内でものごとが行われる状態。
継続するコミュニティは上記の3つが満たされていることが重要です。
コミュニティづくりのキーワード「安心」と「安全」
読んでいてとても分かりにくさを感じているみなさん、ごめんなさい。
ここからは、「熱狂」と「安心・安全」の関係性を図で説明していきます。
上の図をみてもらえるとわかると思うのですが、コミュニティは「安心・安全」を確保してから「熱狂」へと向かうことが重要です。
立ち上げ期においては、物理的に安全が保障されており、コミュニケーションを通して「安心」を感じられることでメンバーが定着します。
「安心・安全」が確保されてからコミュニティ内の「熱狂」をキープしていきます。
佐渡島さんによると「熱狂」には「テンションが高い状態」と「モチベーションが高い状態」という2種類の状態があるそうです。
「テンションが高い状態」とは、周りの環境に左右され、一時的な高ぶりを見せる状態です。
例えば、サッカー日本代表戦を応援する際などは、知らない人とハイタッチしたり感情が一気に高ぶります。
あんなイメージです。
一方で、「モチベーションが高い状態」とは、熱狂の高さは上下せず、常に困難があっても乗り越えようとする状態です。
例えば、人は自己肯定感が高いと、コミュニティにいる価値を感じて、自分の役割を全うしようとします。
理想的なのは「モチベーションが高い状態」です。
佐渡島さんは「モチベーションが高い状態」を「静かな熱狂」と呼んでいます。
では、このコミュニティは0からどうつくるのか、簡潔に説明します。
このように、「安心・安全」と「静かな熱狂」を共存させながらコミュニティを構築していくには、コミュニティのメンバーを1人ずつ増やしていくことがポイントです。
上の図は、「安全・安心を確保した」プロジェクトの進め方を表しています。
フェーズ0からフェーズ2まで、徐々に移行していくことが重要です。
また、フェーズ0の時点で、発案者が以下のことを考えてからメンバーを集めることで「安全・安心」を確保しながらプロジェクトを進められます。
- やりたいことを考える
- 誰のどんな力が必要なのかを考える
- メンバーの役割をイメージする
役割がないと、人はコミュニティのなかで居場所を失います。
コミュニティを継続するために上記のようなことを考えながら運営していきましょう。
以上が本書の要約です。
『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE』の基本情報
本書の著者・参考文献を紹介します。
『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE』の著者
『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE. ~現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ~』の著者は佐渡島庸平さんです。
株式会社コルク代表取締役社長。1979年生まれ。東京大学文学部を卒業後、2002年に講談社に入社。週刊モーニング編集部にて、数多くのヒット作を編集。インターネット時代に合わせた作家・作品・読者のカタチをつくるため、2012年に講談社を退社し、コルクを創業。従来のビジネスモデルが崩壊している中で、コミュニティに可能性を感じ、コルクラボというオンラインサロンを主宰。編集者という仕事をアップデートし続けている
箕輪さんがコミュニティに本気で興味を持ち出してる! https://t.co/OcRp48psAx
— 佐渡島 庸平(コルク代表) (@sadycork) 2017年12月9日
執筆してきた作品・編集を手がけた作品
佐渡島さんの執筆した作品
以下、紹介文の出典はAmazonさんです。
✔️『ぼくらの仮説が世界をつくる』
『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』を育てたメガヒット編集者の仕事論!
✔️『学べるマンガ100冊』
学校よりも塾よりも教科書よりも楽しい、最強の学び本!
佐渡島さんが編集を手がけた主な作品
✔️『ドラゴン桜』
「教えてやる!東大は簡単だ!!」常識破り、処世術。弁護士・桜木による落ちこぼれ高校の再建計画、その内容は東大合格者100人!! 日本のルールは東大を出たやつが作っている。だから……東大に入れ!! もっとも効率的な学習法を教えよう!!
✔️『宇宙兄弟』
2025年。兄は、もう一度だけ自分を信じた。筑波経由火星行きの物語がはじまる! 本格兄弟宇宙漫画発進! 幼少時代、星空を眺めながら約束を交わした兄・六太と弟・日々人。2025年、弟は約束どおり宇宙飛行士となり、月面の第1次長期滞在クルーの一員となっていた。一方、会社をクビになり、無職の兄・六太。弟からの1通のメールで、兄は再び宇宙を目指しはじめる!
✔️『君たちはどう生きるか』
知的好奇心旺盛な少年「コペル君」と、彼を亡き父親の代わりに見守る教養ある「おじさん」。そんなふたりの心温まるやりとりを通じて、生きる意味を平易に、深く説いた児童向け教養小説の古典が初めてマンガ化された。刊行直後から話題を呼び、現在も途切れなく部数を伸ばしている。
『WE ARE LONELY,BUT NOT ALONE』の巻末にあるおすすめ書籍をご紹介
本書の終わりに掲載されている各分野ごとのおすすめ書籍の一部をご紹介します。
さすが編集者なだけあって、おもしろい本がたくさん紹介されています。
ITを理解するための本
✔️『インターネット的』糸井重里
この本は、圧倒的な名著。これだけ深く、正しくインターネットによってもたらされる変化を理解して、言語化できていた人は、糸井さんしかいないのではないか。平気な言葉で書かれているが、理解するのに時間がかかる。何度も読み直して。
✔️『MEDIA MAKERS』田端信太郎
この本もインターネット的の副題本としておすすめ。インターネットによって、メディアがどのように変わるのか丁寧に解説している。発売から数年経っているがその中の主張は一切古びていない。逆に正しく理理解できるようになっているくらい。
✔️『なめらかなお金がめぐる社会。 あるいは、なぜあなたは小さな経済圏で生きるべきなのか、ということ。』家入一真
家入さん自身が元引きこもりで起業家として成功している。弱い人をいかに生きやすくするかという視線で世の中を見ている。インターネットが弱者をエンパワーする。その時間軸を早めに挑戦を家入さんしている。
✔️『〈インターネット〉の次に来るもの』ケヴィン・ケリー
インターネットは初めはパソコンの中の、次にスマホの中のものになり、さらにすべてのものがネットにつながる。そうなると社会がどのように変化していくのか、という仮説を立てるときに役立つ本。このような本は鵜呑みにせずに読むのがちょうどいい。
SNSを理解するための本
✔️『シェアしたがる心理』天野彬
SNS 事情が網羅的に説明されていて、どのような変化が起きているかを理解しやすい。ググのではなくタグる。この言葉の意味がわかなければ読む価値あり。
✔️『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』ゆうこす
SMSを使って、自分の夢を叶えた、ゆうこすさんによるSNSの使い方の解説本。実践的で役立つから、これからSNSを始めようという人が1冊だけ読むならこれを進める。スポーツ選手が道具を大切にするようにSNSを好きになり楽しむことが大切。
コミュニティを理解するための本
✔️『ファンベース』佐藤 尚之
ファンコミュニティを作ることの価値が、明快に書かれていて、簡潔に読みやすくまとまっている。コミュニティ本の中で最もおすすめ。
✔️『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』デビッド・マ-マン・スコット
インターネット以前から、ファンを大切にして、あるコミュニティを作ったことで圧倒的な人気を長期間にわたって維持したグレイトフルデッド。彼らのマーケティング手法はインターネット的と言える。
コミュニティマネージメントを学ぶための本
✔️『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか』ロバート・キーガン
弱さは、コミュニティーを作る上では弱点ではない。その弱さ補いあおうとすることで、チームとして力を発揮できる。お互いの弱さを肯定し合えるか。自分の意識を変えてくれる
✔️『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則ーー『ジャイアントキリング』の流儀』仲山 進也
すごい人を見つけてくるよりも、今いるメンバーがお互いに刺激しあって成長するほうが勝つ可能性が高い。チーム作りの法則が漫画「ジャイアンキリング」を使って紹介されている。なぜ弱さを見せる組織が強いのかの副読本。
✔️『安心社会から信頼社会へ』山岸俊男
安全、安心、信用、信頼。それぞれの言葉の細かい定義など、この本を読むまで考えたことがなかった。この本で信頼に興味を持ったら、同じ著者の「信頼の構造」も合わせておくと理解が深まる。
✔️『完全教祖マニュアル』架神恭介/辰巳一世
タイトルが強烈だけれど、内容がすごくまっとうで、宗教がどのようにコミュニティーを作ったのかも、分りやすく解説してくれている。コミュニティ運営をするうえで、参考になるところが多い。
✔️『つながりの作法』綾屋紗月/熊谷晋一郎
弱さについて理解すると、コミュニティ運営がうまくいく。障害者が自らの事例を話しているが、どれも僕たちが気づけていなかった些細な感情に気づくきっかけになる。
というわけで今回は以上です。
個人的には第3章の「安全・安心とは何か?」がとても発見が多かったです。
コミュニティや孤独というキーワードに興味のある方は手にとってみて下さい。
ではでは